山を覆う霧


157: 名無しさん 2016/01/25(月) 02:50:10.90 ID:EOC21Q1Z0.net
親父から聞いた怖いというよりは不可解な、まさに狐につままれた様な話

親父が若い頃、友人たちと山の麓のキャンプ場へキャンプに出かけた
テントを張り終えてキャンプ場内を散策していると、キャンプ場の奥から山へと登っていく小道を見つけた
道の入り口には何の表示も無かったが、獣道などではなく明らかに人が通っている道

親父たちは興味を惹かれ、ちょっとした冒険気分でその道を登ってみることにした
しかし期待に反して10分も登らない内に小道は行き止まり
行き着いた先は何かを祀っているらしい古い祠だった

古いとは言ってもきちんと手入れはされている様で、おそらくキャンプ場の人辺りが管理をしているのだろう
つまりこの小道は祠の管理をする人が行き来するためのものだったのだ

その後キャンプ場に戻った親父たちはバーベキューをやってたらふく食って飲んだ
しかし明るいうちから始めたせいで、片付けが終わっても寝るにはまだ早い時間だった

そこでなぜか肝だめしをやろうという話になり、昼間見つけた祠まで一人ずつ行って帰って来ることになった
四人いたので一人目が祠に証拠の品を置き、二人目がそれを回収、三人目と四人目も同様にすることにした

くじ引きで親父はしんがりになった
一人目と二人目は何事も無く終了
満天の星空に月まで出ていて道の周囲にはその明かりを遮るような木も無いため、懐中電灯無しでも歩けるくらいで全然怖くなかったらしい
拍子抜けしながらも出発した三人目が帰って来ると「おい、この山には何かいるぞ」と言い出した

しかし、どうも怖がらせようとしている感じではない
聞くと、小道を登りだしたら道の脇の草むらをガサガサと掻き分ける音がついてきたという

最初は親父たちが脅かすためについてきたのかとも思ったそうだが、草の丈は人が隠れられる高さではない
「狸か狐か、はたまたイタチか。姿こそ見せなかったが逃げもせずずっとついて来てた」と

恐らくキャンプ客のおこぼれ目当てでこの辺に住み着いている奴で、ある程度人にも馴れているのだろう
ひょっとしたら祠の管理人からエサでも貰っているのかも知れない
すっかり和みムードで最早肝だめしという雰囲気では無かったが、三人目が証拠品としてライターを祠へ置いてきてしまったので、回収のために親父は予定通り出発した

小道へ入る際に友人たちから「お前、バーベキューの肉の匂いがするぞ」「気を付けないと後ろからガブッとやられるぞ」なんて脅しをかけられたが、親父を含め皆笑っていた

小道を登り始めると、程なくして右後ろからガサガサと草を掻き分ける音が聞こえてきた
しばらく続いた音が途切れたかと思うと今度は左後ろから、次はまた右後ろからと、位置を変えながら音は親父についてきていた

音が途切れた時に後ろを振り返っても道を横切る相手の姿は見えない
立ち止まれば音も止まる
チチチと舌を鳴らして相手の気を惹いてみても、こちらが止まっている間は息を殺してじっと様子を窺っているのか全く気配が無い

親父は「用心深いからこりゃきっと狐だな」なんて思いながら祠でライターを回収、帰り道も友人たちの姿が見える辺りまで音はついて来たそうだ



158: 名無しさん 2016/01/25(月) 02:50:53.14 ID:2ujiVy570.net
肝だめしを終えてテントに戻ってからも「あれは狸だ」「いや狐だろう」と音の正体の話で盛り上がり、夜が更けてもみんななかなか寝付かずにいた
そんな中、一人が「シッ、静かに」と声をひそめて言った

みんなが黙るとテントの外から小道で聞いたあのガサガサと草むらを掻き分ける音が聞こえてきた
「おっ、タヌ公がおいでなすったぞ」「だから狐だって」「なるほどこれは小動物の音だな」「食べ物でも探しに来たのかな」

ヒソヒソ声で語り合う間も、ガサガサと草を掻き分ける音はテントの周りをぐるぐると回っているようだった
深夜の珍客にテント内の空気も和む中、急に一人が緊張した様子で更にトーンを一段落とした声で言った

「ちょっと待て、テントの周りに草むらなんか無いぞ」
場が凍りついた
テントサイトには所々草も生えてはいるが、掻き分けるほどの草むらに囲まれているわけではない

ガサガサと草を掻き分けながらテントの周りを回れるはずがない
それまで臆病だけど好奇心も旺盛な子狸か子狐のような可愛らしいものだと勝手に思っていた"それ"が、いきなり得体の知れない存在になった

親父もあの時自分が得体の知れない相手に尾けられいたことに今更ながら背筋を凍らせた
もう誰も言葉を発しない

ガサガサという音はまだテントの周りを回っている
誰も外を確かめに行こうとはしない
親父自身もそんな勇気は無かった

ただ息を殺し、テントの外から聞こえてくる音に全神経を集中させていた
どれぐらいそうしていたか、時間の感覚がなくなりかけた頃、不意にガサガサという音が止んだ

次の瞬間、目の前が真っ白になるほどの光と音というよりは衝撃というべき轟音がテントを襲った
「落雷だ!」と親父は直感した

友人たちもそう感じたらしく、「落ちたぞ」「たぶんすぐ近くだ」と小声で囁きあっていた
ガサガサという音が止んでいたこともあり、友人の一人が恐る恐るテントから顔を出して外の様子を窺った

しかしどうもおかしい
付近には落雷があった気配などなく、それどころか肝だめしの時と変わらぬ満天の星空で雷雲の欠片すらない

その日は親父たち以外にもキャンプ客が割と来ていて、親父たちのテントから見える位置にも他の客のテントが張られていたが、今の落雷で起き出してきた様子も無い

まるで落雷など無かったかの様だ
もう何が何だかわからずこんな所に長居はしたくないということで、二泊の予定を切り上げ夜が明けたら早々にここを発つことにした
親父はその後夜が明けるまでとうとう一睡も出来なかった

159: 名無しさん 2016/01/25(月) 02:51:24.69 ID:t+RE9uc+0.net
夜が明けて朝食もそこそこにテントを畳み、帰り支度を整えると管理事務所へ帰る旨を伝えに行った
事務所で落雷について尋ねるも、やはりそんな話は聞いていないと言われたのみ

本当に落雷など無かったらしい
気になったので祠のいわくについて何か知らないかも尋ねてみたら、予想外の答えが返ってきた

「そんな祠は知らないし、第一キャンプ場の奥に山へ続く小道なんか無い」
そんなはずは無い、自分たちは実際にその道を通ったと主張しても、こちらが把握していない道など無いの一点張り

しまいには「そんなにあると言うなら案内してみろ」と言われ、小道の存在を確かめに行くことになってしまった
親父は正直行きたくなかったが他の友人たちが行くと言うので、一人で残るのも嫌だからついて行った

小道なんか無かった
昨日は普通に見つけて、夜にも迷わず行けたのに
小道の入り口があったはずの場所さえ何処だかわからなかった
結局親父たちの勘違いということで、親父たちは管理人に謝って帰ってきた

163: 名無しさん 2016/01/25(月) 14:26:56.45 ID:BmY0hga20.net
作り話なら残念だけど、興味深く読んだよ
書いた人、後日談などあったらよろしくです

170: 名無しさん 2016/02/01(月) 02:57:07.64 ID:oGHbxZx50.net
>>163
親父は作り話をするような人間ではなかったので、おそらく実体験なんだと思う
ただ、記憶のあやふやな部分を割と適当に話す人ではあったので、事実と違う箇所や盛って話した部分なんかはあったかも知れない

後日談は特に聞いてない
すまん

173: 名無しさん 2016/02/06(土) 17:13:38.89 ID:YPCW5so70.net
>>170
面白かったぞ。また書いてくれ。

223: 名無しさん 2016/02/28(日) 10:35:59.33 ID:1iNLDmly0.net
営業してた時の先輩の話。
会社には17:00以降に戻って来るという暗黙のルールがあって、
大体16:30くらいには暇になり時間も中途半端に余るから何処かで暇つぶししてから会社に戻ってる。

先輩は近くの山に誰にも見つからない休憩スポットを見つけ、その時もそこで一服していたらしい。
近くの草むらがガサガサ物音を立てたかと思えば、中型犬サイズの見たこともない生き物が現れたそう。
それはイノシシでも犬でも猫でも狸でもイタチでもない。
あんな動物初めて見たと言っていた。
その山付近の取引先の社長も同じような事を言っていて何か棲み着いているのかもしれない。

ここからは俺の推測。
その山にはペット霊園があるんだ。
俺もペットを飼ってるけどやっぱり情が入る。
霊園だと情が一箇所に集中するから何かが具現化されたという訳。

225: 名無しさん 2016/02/28(日) 14:22:44.29 ID:LUnNM/vB0.net
ヌートリアみたいな従来その地域にいなかった外来種の可能性もあるな

240: 名無しさん 2016/03/08(火) 15:06:49.47 ID:tXwsSTz60.net
会社の同僚は趣味でサックス吹いてる。
高校進学してから女にモテるたいという清々しい理由で吹奏楽部に入ってずっと続けてる。

故郷にいた時は裏山が練習していた。家から20分ほど登った、谷を見下ろす岩場が彼の練習場所。子供の頃からの遊び場だったらしい。
はじめの頃は練習する度に笑われてたよと彼は教えてくれた。

田舎のカラスは頭がよくて、人の笑い声やラジオの声を真似るらしい。
カラスに笑われながら3年間裏山で練習した。大学進学で故郷を離れることになり、引っ越し前日にも練習に行った。帰る時に何時ものように「ハハハハハー」という笑い声が聞こえた。最後までこれかよと苦笑してたら「カバレヨー」と言われた。
参るよなぁ、不覚にもカラスに泣かされそうになったよ。

それって本当にカラスだったのか。とは聞けなかった

241: 名無しさん 2016/03/08(火) 18:20:04.46 ID:0jt8QkWK0.net
こういうほっこりする怪異譚もいいな

242: 名無しさん 2016/03/10(木) 23:45:02.27 ID:093GdG9n0.net
裏山も一緒に練習してくれてたみたいだからな

243: 名無しさん 2016/03/11(金) 18:28:38.80 ID:CB7N1LCq0.net
カラスにしろ山の怪にしろ、>>240は貴重な体験ができたな
まさに裏山シス

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引用元:http://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1449443522/