森

350: 名無しさん 2013/10/03(木) 17:44:29.31 ID:xyXI8rCC0
夜の花嫁行列

知り合いの話。

実家への里帰り、夜の山道で車を走らせていた時のこと。
前方に明かりの長い列が見えてきた。
近づくにつれ、大勢の人が提灯を下げて、練り歩いているのが見て取れた。

列は道の端を歩いていたので車と接触することはなかったが、用心のために
側を抜ける際は徐行してみた。
列の中程に籠が担がれており、その中に花嫁衣装の女性が座っている。

「花嫁行列か、今時珍しい。
 ……っていうか、何でこんな夜中にこんな場所を通ってるんだ?」

薄気味が悪く思えたので、じろじろと見るような真似はせず、
充分遠ざかってから後ろを確認してみた。

つい先に行列がいた道は真っ暗で、明かりなどどこにも見えなかったという。

帰宅後にこの話を家人にしたところ、祖父からしつこくこう聞かれた。
「花嫁は乗っていたか? いたんだな、間違いないな?」
安堵した様子にただならぬものを感じて、一体どうしたのだと問うてみた。

「あれは昔から目撃されてる花嫁行列でな。
 『ミサキの嫁入り』なんて、地元じゃ呼ばれてるよ。
 正体は誰も知らねぇ。
 籠に花嫁が乗っている時は、何も問題なんて起こらないんだが……。
 誰も乗っていないと、次の日、村から娘が一人消えるってんだ。
 山の神様に嫁に獲られるって言われてたけどな」

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351: 名無しさん 2013/10/03(木) 17:45:08.07 ID:xyXI8rCC0
(続き)
彼はその数年後に結婚し、可愛い娘さんを授かった。

あの言い伝えを頭から信じた訳ではないが、出来るだけ実家に娘さんを
泊めないようにしているのだそうだ。

「いや、信じる信じないの前に、あの行列を見ちゃってるからなぁ。
 祖父さん祖母さんも、夜に娘は泊めん方がええ、って言ってくれたし」
難しい顔をしながら、彼はそう言っていた。

360: 名無しさん 2013/10/04(金) 18:17:30.50 ID:PR100RCj0
人の顔を持つ大蛇

知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

「とある山奥の村でですね、一風変わった注意を受けたことがあります。
 ここの山奥に分け入るのならば、煙草を絶対に持っていけと。
 私が『煙草はやりません』と言ってみても、吸う人も吸わない人も関係ないから、
 常に身に付けておくようにと、そう言われまして」

「日本でも似たようなことを言われたことを思い出しまして、こう聞いたんです。
 『蛇除けですか?』って。やはりそうでした。
 お国が違うというのに面白いですねぇ、と思いましたよ」

ここで彼は少し苦笑して、こう続けた。
「しかしこの蛇というのが、日本とえらく違いましてね
 人の顔を持つ大蛇だというのです。
 体型はかなりずんぐりむっくりらしく、動きはそんなに速くないらしいのですが。
 驚くことにこの蛇、丸呑みした人間の頭部を、自分の頭として複製するのだそうで。
 つまりこの蛇の顔は、最後にこいつに呑み込まれた人間の物なのだそうです。
 『人面の蛇』だの『顔盗みの蛇』のような呼ばれ方をしていました、はい」

「この蛇は、取り込んだ人の知性で物を考えることが出来るようで、常に頭の良い
 人間を餌食にしようと探しているのだそうで。
 蛇というよりも妖怪ですが、そういう類いにも向上心というか、進化したいとか
 上に昇りたいという欲求があるのかもしれませんね。
 この話を聞かされて興味深く思いましたですよ」

361: 名無しさん 2013/10/04(金) 18:19:24.68 ID:PR100RCj0
(続き)
「こいつは先に言ったように、動きが素早くないものですから、狙った人に近づく
 ために色々と興味を引くようなことを話し掛けてくるのだそうです。
 お宝の場所を知っているだの、この先で人が倒れているので助けてやってほしいだの、
 そんなことを話しながら近寄って、いきなりペロリと丸呑みするのだとか。
 え、人間の口でどうやって人一人を呑み込むのかって?
 さぁそこまではわかりませんねぇ。聞いておりませんし。
 頭を好きな形に変形出来るのですから、こう、ガッと広がるんじゃないですかね」

「厄介なことにこの蛇、食べた人の知識や記憶を、自分の物とするらしいのです。
 その所為か、話し掛けてくる内容が、実に種類豊富で面白いのだそうですよ。
 蛇の中に、知識が蓄積されていくんでしょうかね。
 昔話に、過去の歴史を聞きたいがために、この蛇に会いに来る都の学者のお話が
 あるのだとか。
 学者を食べようと話し続ける人面蛇と、必死で逃げながら話を書きとめ続ける学者の、
 恐ろしいけどどこかユーモラスな内容でした、はい」

「ドキドキしながらその山に登ったのですけど、人面蛇とは会えませんでしたね。
 まぁ、会えなくて良かったのでしょうけど」
彼はそう言って笑っていた。

417: 名無しさん 2013/10/09(水) 20:17:28.91 ID:03snDjMA0
山を行くジプシーの一家

知り合いの話。

彼は若い頃、欧州での一人旅を好んでしていたそうだ。
ある日、山を行くジプシーの一家と出会い、馬車に同乗させてもらったのだという。
荷馬車は一家の者が寝泊まりしているだけあって大きくゆったりとしていて、
午後の一時を楽しく会話しながら過ごした。

一家の祖母は昔ながらの占いをよくするらしく、車座になって一緒に夕食を取った後、
彼の未来を占ってもらうことになった。

老婆は、何か大きな動物の骨らしき物を手でこねくり回しながら、難しい顔になって
重々しくこう述べた。

「あんたはこれから……美味い酒を飲んで、一晩中楽しく唄って踊るだろうよ」

そう言ってニヘラと笑う。
一家の者も声を合わせて笑い、宴会が始まった。

実に楽しく愉快な酒盛りだったらしい。
彼も日本の歌を幾つも披露し、やんやの喝采を受けたそうだ。

翌朝に目が覚めると、周りには誰の姿も見えなかった。
焚き火を起こした跡はあるが、自分の荷物以外には何も残されていない。

418: 名無しさん 2013/10/09(水) 20:18:09.38 ID:03snDjMA0
(続き)
二日酔いで痛む頭を擦りながら後ろを向くと、そこには朽ち果てた荷馬車があった。
近寄ってみてまじまじと見ているとあることに気が付き、口の中の唾が一気に引いた。

廃馬車の側面に微かに残された紋様は、彼が昨日乗せてもらった馬車に刻まれていた
それと一致していたのだ。

荷馬車の側にはぼろぼろになった楽器が幾つも落ちていた。
数といい種類といい、一家の者達が奏でていた楽器と同じ物に思えてならなかった。

「自分は昨日の昼からずっと、一体誰と過ごしていたのか……?」
いくら考えても答えは出ず、落ち着かない気持ちでその場を後にしたのだという。

430: 名無しさん 2013/10/10(木) 08:05:15.77 ID:a4CDjrVd0
>>417
乙です。ヨーロッパ話は珍しいですけど、一風変わっていてこれはこれで面白いですね。

>>老婆は、何か大きな動物の骨らしき物を手でこねくり回しながら、
漫画のマスターキートンにも似たようなシーンがあったのを思い出しました。
今でも骨とか使う本格的な占いジプシーっているんでしょうか。
一度くらい占ってもらいたい。

しかし、現在のジプシーというかロマの人たちって、イタリアとか色んな国で問題を起こしているみたいですが。
こういう文化も時とともに失われるのでしょうね。

432: 名無しさん 2013/10/10(木) 13:45:42.10 ID:I3KowMyt0
ロマの民とはまた別系統になるんだろうけど、ピーター・トレメインの『アイルランド幻想』(光文社文庫)
中の『悪戯妖精プーカ』をここでオススメしとく。
アイルランド発祥の流浪民・ティンカーの呪いのお話。
この短編集には、同じティンカーが関わってくる話で、クトゥルーリスペクトの話も面白いけど、これは海怖だね。

ちょうどこれからハロウィンだけど、山を舞台にしたハロウィン(サウェン・フィシュ)の話も収録されてるし
全体の2/3くらいは山怖系なので、興味ある方は一読どぞ。

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引用元:http://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1377875509/

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