紅葉

201: 名無しさん 2005/10/29(土) 06:40:20 ID:4cjMA6Jd0
秋、山の中腹、一本だけ真っ赤に染まった紅葉。
見事なその木から、一枚残らず葉をむしる老夫婦がいる。

山といっても彼らの土地だし、そこに生えている木を
どう扱おうと文句など言う義理はないが、その行為には、
何となく許しがたいものを感じた。

その二人が、その地方で自分が定宿にしている小さな旅館の
経営者ともなれば、なおさらだ。

その光景を見たわけではない。
ここへ来る途中、よそで話に聞いただけだ。
何のためにそうしているか、時間の都合で聞けなかった。

見たわけでなくても、宿の玄関先に置かれた米袋の中に
紅葉がぎっしり詰め込まれていれば、聞いた話は嘘では
ないのだと知れる。

泊り客は俺一人。
今回は二泊する予定だ。
明日あたり、あれ、まこうか。
卓を囲む夕飯時に婆さんがそう言い、爺さんが同意した。
何の話だろう。

好奇心が湧いたが、紅葉の一件で少し不機嫌な俺は、
問いただすこともしなかった。
この宿に泊まるのは今回が最後だと、
何となく、そう決めていた。

二人の話は続き、どうやら俺も明日、何かを一緒にまく事に
なりそうだった。

その何かが玄関先の紅葉だと分かったとき、ついに我慢できず、
あれをどうするつもりなのかと尋ねた。
問い詰めるような口調だったかもしれない。

202: 名無しさん 2005/10/29(土) 06:40:58 ID:4cjMA6Jd0
びっくりするぞ。
爺さんが言い、婆さんが頷いた。
翌日の午後、のんびりした散歩から戻ると、二人は山へ入る
仕度をしていた。
背負子に紅葉の入った米袋がくくり付けられ、爺さんが背負った。

年寄りとは思えない歩度で山を歩く二人。
実のところ、ついていくのが精一杯だった。
一時間ほどだろうか。
二人が立ち止まり、ここらで良かんべえと言った。

爺さんが背負子をおろし、袋の中から紅葉をつかみ出した。
これをまくのだろうか。

見ていると、その一枚一枚を木々の根元に置き始めた。
数メートル四方に一枚、といった具合だった。
真西の方角に置くのだと言われた。
よく分からないまま俺も紅葉をつかみ、同じようにした。

袋が空になると、二人はパンパンを手を二回鳴らし、
頭を下げ、山を下り始めた。
見事な夕焼けだった。

翌朝起きてみると、山は秋の色に染まっていた。
赤や黄色、といっても色は二種類ではない。
さまざまな黄色、色とりどりの赤。
むらむらと、土地のエネルギーを見せつけるような
力強い色だった。

どうだい、いいもんだろ。
振り向くと、爺さんが笑っていた。
俺は言葉も出ない。

203: 名無しさん 2005/10/29(土) 06:42:40 ID:4cjMA6Jd0
あれをやらないと、綺麗に染まらねえんだ。
爺さんの右手には一升瓶が握られている。
珍しくもない日本酒だった。

聞くと、最初に葉をむしった紅葉に飲ませるのだという。
飲ませるとどうなるのかと聞くと、

酒に酔えば真っ赤になるだろう。
明日だな、明日。
そう言ってまた笑った。

その日に俺は帰らねばならず、紅葉に酒を飲ませる光景を
見ることは出来なかった。
酒に酔った紅葉が、どんな風に赤くなるのか、爺さんは
最後まで口を割らず、いずれ、御縁があれば見られるよ。
と言った。

爺さんたちが紅葉をむしる話を聞いた店に立ち寄り、
紅葉の酔態を尋ねると、どれに酒を飲ませたか
分からなくなるとの事だった。
ありゃ、どうなってんのかねえ、と答えた。

葉を全てむしられた紅葉が、他の木と区別できなくなる。
ぜひ見てみたいが、それ以来、紅葉に酒を飲ませる日に
そこを訪れる縁に恵まれていない。

いずれ、御縁があるよ。
今では、これが爺さんの決まり文句だ。

山にまつわる 超怪奇体験

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引用元:http://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1129644145/