星空

757: 名無しさん 2014/06/11(水) 19:05:07.59 ID:isLLfYws0
4年前の夏、単独で長野の山奥の沢を遡行していた。

日程は普通だと2泊3日だが、体力に自信があるので1泊2日とし、予備でもう1泊という計画だった。

1日目、林道と微かな踏み跡を辿って入渓し、遡行すること5時間、もうかなりバテていた。

2日目の夜から天気が下り坂の予報だったので、序盤にペースを上げ過ぎたのかも知れない。

早めにビバークしたかったが、適地がないのでそのまま惰性で歩き、予定通りの幕場に着いたのは18時前だった。
疲労困憊だったので、さっと飯を済まし、恒例の焚き火はせずに眠りについた。

翌朝は寝坊し7時に起床した。よく寝たはずなのに頭が重い。
朝飯は時間がもったいないので簡単な行動食で済まし、予定より2時間遅い8時に出発した。

2日目のペースは初日よりましだが、疲れが早くに出た。
それでもルート図の参考時間とほぼ同じ通りに、この沢の難所である40m大滝に着いた。

無論単独で直登するのは自殺行為に近いので、樹林帯を使い大きく高巻く。
高巻きルートは獣道と言っていいほど不明瞭なので、自分でルートを探る。

その探っている時に、視界に何か黄色い物が目に入った。
30mくらい離れているのでよく分からないが、他にも白いビニール袋みたいな物が散乱している。

最初はゴミを捨てるなんてひどいなぁと思っていたが、少し考えたらここは一般登山者も釣り師も入ってこれない山奥で、あんな場所にゴミ捨てるのは沢登りしてる人でも無理な話だ。

頭に遭難者の文字が浮かんだが、もしそうだったとした場合、後に起こる面倒事と、そして確認しに近づくには、斜面が急すぎて真っ直ぐには行けず、斜面を大きく登ってその上から立木を利用してロープで下りなければ不可能であった。

その二つの事情と、正義感というか、義務感を天秤にかけたら、あれは山スキーとかやってる人が荷物を捨てたか落としたんだろうと、自分の都合よい解釈をし、気にかけるのを止めることにした。

758: 名無しさん 2014/06/11(水) 19:35:52.64 ID:isLLfYws0
そういうのもあってか、この高巻きに思った以上の時間がかかり、沢床に戻った頃には15時を過ぎていた。

このまま行けば登山道に出るまで3時間。そして闇夜の下山に4時間かかるとして、あと7時間歩かねばならない。

いつもだったらここでビバークしていただろう。天気が下り坂でもここまでくれば増水の心配もないし、これ以上登ると森林限界を越えるので幕場はないに等しい。

だがそんなことよりもさっき見たものが気になって、この場所で泊まるなんてありえなかった。

黙々と登っていくと水流は細くなっていき、やがて涸れた。
ここからが大変だった。下向きに生えたネマガリダケに行く手を阻まれ、登山道へ出る前に日が暮れてしまった。

そしてここで無情にも雨。幸い源頭が泥壁やガレ場ではないから滑落の危険は少ない。
焦りを落ち着かせるため休憩をし、今後の作戦を考えた。

暗闇の藪を進んでいくのは無謀だが、だいたいの現在地は分かっており、いずれにせよ上へ登れば必ず登山道へぶつかる。

登山道へ出ればあとは整備されている道を下るだけなので、疲れていても訳はない。

ここで沢装備を外し、ヘッドランプと雨具を身に着け再び藪を漕ぐ。
しかし行けども行けども藪が続き、一向に登山道へ出ない。時刻は20時前で、進み具合を考えるとどうもおかしい。

ふと気づくと今立っている場所はあまり傾斜がきつくない。源頭のツメは急斜面なのが普通だ。

コンパスで確認せずに、楽な方へ楽な方へと登ってしまった結果なのだろう。
こうなると現在地の特定は難しいが、もうとりあえず登って稜線へ出るほかはない。

そして何とか稜線へ辿り着いたが、そこに道はなかった。パニック状態になりつつ、血眼で地図を読み現在地を予想する。

どの辺りにいるか予想は付けたが、東西どちらかの方向へ行くしかないで、間違っていた場合はドツボにはまってしまう。

ここは全くの不本意だが、吹きっさらしの稜線でビバークをすることにした。

759: 名無しさん 2014/06/11(水) 19:46:06.75 ID:isLLfYws0
なんかもう面倒になったので止めます。
結局落ちという落ちはありません。
あれが遭難者だったという確証も、この辺りで行方不明になったという情報もないです。
ただ疲労と恐怖心からか、幻聴や幻覚が見えただけです。
翌日はほぼ予想していた場所にいたので、何事もなく無事に下山しました。

760: 名無しさん 2014/06/11(水) 19:46:21.54 ID:Q+uyE6ZZ0
ビバークって緊急的に野営することじゃなかったっけ?
本意のビバークとか予定済みのビバークって一体…?

761: 名無しさん 2014/06/11(水) 19:52:49.48 ID:isLLfYws0
ビバークにはフォーストビバークとフォーカストビバークがあります。
沢登りにおいてはビバーク=幕営というのが普通です。

762: 名無しさん 2014/06/11(水) 20:01:16.24 ID:Q+uyE6ZZ0
なるほど勉強になった。

765: 名無しさん 2014/06/11(水) 20:38:23.42 ID:QQsCfnvO0
>>757-759
オチがなくても充分怖かったです。
天気が下り坂の予報だったことが少しずつ予定を狂わせてしまった感じですね。

ネマガリタケは掴むには信頼に足る強度を持っていますが、かき分ける場合は強敵ですね。

長野のどの辺かわかりませんが稜線だとかなりの強風だったのではないでしょうか。

771: 名無しさん 2014/06/11(水) 23:15:57.40 ID:Iaq6dghM0
>>757-759
専門用語の知識が塀内真人や村上もとかのマンガベースくらいな自分でも
意味は追えたし面白かった。
つか体験談にオチなんてつくもんじゃないし。

恐怖の根源のひとつは「その場に本来在り得ないモノがそこに在る」事に
あるんじゃないかと思ってる(妖怪とかの怖さの一端もそれにある)んで
例えそのあと何事もなく、道にも迷わず、予定通りの行程で下山できたのだとしても、
その黄色いモノと白いビニール様のモノは、『アヤカシ』なのだと思うです。

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引用元:http://maguro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1394721222/