赤黒い手
先輩の話。
実家近くの山の展望台に出かけたのだという。
ひとしきり眺望を楽しみ、缶コーヒーでも飲もうと自販機に向かった。
休憩所に置かれていた自販機は、当時よく見られた当たり付きのタイプだった。
いきなり当たりが出た。もう一本選ぶと、それもまた当たりとなる。
調子に乗った先輩はボタンを押しまくった。
五本連続で当たった時点で、さすがにおかしいと指を止める。
壊れているのかな?と思い、器械を叩いてみたりした。
振り向くと毛むくじゃらの赤黒い手が五つ、藪の中から突き出されていた。
本体はよく見えない。
足元の六本の缶ジュースと目の前の手をしげしげと見比べた。
数はぴったりだ。
一本ずつ缶を握らせると、手は静かに薮中に引き返していったそうだ。
先輩の話。
実家近くの山の展望台に出かけたのだという。
ひとしきり眺望を楽しみ、缶コーヒーでも飲もうと自販機に向かった。
休憩所に置かれていた自販機は、当時よく見られた当たり付きのタイプだった。
いきなり当たりが出た。もう一本選ぶと、それもまた当たりとなる。
調子に乗った先輩はボタンを押しまくった。
五本連続で当たった時点で、さすがにおかしいと指を止める。
壊れているのかな?と思い、器械を叩いてみたりした。
と、背後でガサガサと音がする。
振り向くと毛むくじゃらの赤黒い手が五つ、藪の中から突き出されていた。
本体はよく見えない。
足元の六本の缶ジュースと目の前の手をしげしげと見比べた。
数はぴったりだ。
一本ずつ缶を握らせると、手は静かに薮中に引き返していったそうだ。
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813: 名無しさん 04/12/09 01:49:38 ID:NpO2XFNm
洞
同僚の話。
戦前、彼の実家は裏山でお酒を造っていたらしい。
天然の洞を利用して醗酵させていたそうだ。
村では他にも何軒かが酒造りをしていたが、彼の家の酒は格別に美味かったという。
家の言い伝えによると、その昔、山の主がその洞で子供を産んだということだった。
どういう事情があったのかは不明だが、家の者が主に洞を提供したのだと。
無事に出産を終えた主は山に帰る前、家族にこう言い残した。
酒造りをしているのか。ならばここで酒を造ればよろしい。
主がいた洞は、温度の変化がなくなったみたいに、いつもひんやりしていたという。
空気も心なしか澄んでいるようだった。
二十年くらい前に崖崩れがあり、その洞は今はもうない。
「本っ当に残念だよ」酒好きの彼はそう言っている。
同僚の話。
戦前、彼の実家は裏山でお酒を造っていたらしい。
天然の洞を利用して醗酵させていたそうだ。
村では他にも何軒かが酒造りをしていたが、彼の家の酒は格別に美味かったという。
家の言い伝えによると、その昔、山の主がその洞で子供を産んだということだった。
どういう事情があったのかは不明だが、家の者が主に洞を提供したのだと。
無事に出産を終えた主は山に帰る前、家族にこう言い残した。
酒造りをしているのか。ならばここで酒を造ればよろしい。
主がいた洞は、温度の変化がなくなったみたいに、いつもひんやりしていたという。
空気も心なしか澄んでいるようだった。
二十年くらい前に崖崩れがあり、その洞は今はもうない。
「本っ当に残念だよ」酒好きの彼はそう言っている。
814: 名無しさん 04/12/09 01:50:39 ID:NpO2XFNm
神隠し
知り合いの話。
彼女の実家の墓所は、町外れの山の中にある。
墓参りに行く度、「一人で山の奥に入るんじゃない、神隠しに遭うぞ!」
そう厳しく言われていたという。
長じてから、その山の謂れを知った。
その山に一人で迷い込んだ者は、次の日までに消えてしまい、見つからなくなるのだと。
何となく不気味に思われて、子供たちはその山の近くで遊ぼうとはしなかった。
大学生となり、地元の歴史を調べていた時、彼女はとある事実を知ってしまった。
件の山はごく近世まで、姥捨て山として存在していたのだ。
それとも捨てたことへの後ろめたさから、神隠しのような噂が生じ、禁忌の土地へと
変わったのか。
今では、色んな意味でその山が怖いのだという。
墓参りの時は、子供たちから絶対に目が離せないそうだ。
知り合いの話。
彼女の実家の墓所は、町外れの山の中にある。
墓参りに行く度、「一人で山の奥に入るんじゃない、神隠しに遭うぞ!」
そう厳しく言われていたという。
長じてから、その山の謂れを知った。
その山に一人で迷い込んだ者は、次の日までに消えてしまい、見つからなくなるのだと。
何となく不気味に思われて、子供たちはその山の近くで遊ぼうとはしなかった。
大学生となり、地元の歴史を調べていた時、彼女はとある事実を知ってしまった。
件の山はごく近世まで、姥捨て山として存在していたのだ。
神隠しの山を、人を捨てる地に利用したのは、誰のどのような思惑だったのか。
それとも捨てたことへの後ろめたさから、神隠しのような噂が生じ、禁忌の土地へと
変わったのか。
今では、色んな意味でその山が怖いのだという。
墓参りの時は、子供たちから絶対に目が離せないそうだ。
856: 名無しさん 04/12/10 19:42:36 ID:3rP+lfLh
>>814
これって、この山に人を捨ててたものだから、
そこに人を取る何かが住み着いたってことじゃないのか?
物の怪に餌を与えてたのは他ならぬ人間自身だったというオチかも。
最近知ったのだが、うちの裏山も因縁があった。
そういや、そこは広場になっていたにもかかわらず誰も遊んでいなかった。
記憶をたどると、崩れかけた小屋が子供心にもなんとも言えず気持ち
悪かったんで近寄らなかったような。
こういうのって、土地になにかしら影響出るのかな・・・
山怪 弐
これって、この山に人を捨ててたものだから、
そこに人を取る何かが住み着いたってことじゃないのか?
物の怪に餌を与えてたのは他ならぬ人間自身だったというオチかも。
最近知ったのだが、うちの裏山も因縁があった。
いや姥捨てとかいうヘビーなものじゃなく、牛を〆ていたらしいのだが。
そういや、そこは広場になっていたにもかかわらず誰も遊んでいなかった。
記憶をたどると、崩れかけた小屋が子供心にもなんとも言えず気持ち
悪かったんで近寄らなかったような。
こういうのって、土地になにかしら影響出るのかな・・・
山怪 弐
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創作っぽすぎる長文よりさっぱりしていて好きだ