山並み

154: 名無しさん 2006/05/14(日) 08:26:48 ID:4AaT4Lk20
波紋を広げた田んぼ

落ちた。
と言っても、ほんの3メートルほど。
濃い色の瀬まで一瞬だった。

こもった水音と泡が満たす水中で、もがいた。
充分な水深はあったが、上下は分からなかった。

ザックの浮力で浮き上がると、頭では分かっていたが、
それをじっと待てるほど、冷静でもなかった。

水を大きく掻いた手から、抵抗が抜けた。
伸ばした手、肘から先が水面に出たらしい。
次いで、顔に空気を感じた。

口と鼻が空気を求め、少しの水と大量の空気が
胸に流れ込み、咳き込んだ。
目を開いた。

明るい光景が、はるか頭上に広がっていた。
田んぼと、村の鎮守様でも置かれていそうな、こんもりした山。

田んぼに張られた水は、青い。
稲は明るい緑色。

無様に落ち、水面に顔を出して頭上に見えたのが、それだ。
どれだけ驚いた顔をしているだろう。

俺の動きが止まった。
背中のザックに、水中へ引き込まれる力を感じた。

同時に、水面から引き出されるような力も。
頭上に見えている光景が、実は眼下にある。

不意に、そう気付いた。
はるか下の田んぼまで、落ちようとしている。
空中にぽっかり浮かんだ、大きな水の塊の中に俺は居る。

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155: 名無しさん 2006/05/14(日) 08:29:37 ID:4AaT4Lk20
数メートル先の水面が弾け、水着姿の子供が空中に
投げ出された。

声はなく、たちまちその姿は小さくなり、はるか下の田んぼに
綺麗な丸い波紋が広がった。

背中のザックに引かれるまま、俺は水に潜った。
すぐ顔に空気を感じ、ザックの肩紐を乱暴に掴まれ、地面に
放り出された。

頬を激しく叩かれ、目を開くと、友人の顔があった。
一分以上も沈んだままだったという。

子供が落ち、波紋を広げた田んぼ。
もし、俺がもっと高いところから落ちていたら、一気に水を
突き抜け、俺も田んぼに波紋を作っていたかもしれない。

翌日、山で飛び込み遊びをしていて行方不明になった
子供の記事を新聞に見つけた。

俺が居た所から、数百キロも離れていた。
どこかの田んぼで、子供の死体が発見されたという記事は、なかった。

157: 名無しさん 2006/05/14(日) 12:03:04 ID:FWM5jJUp0
>>154-155
なんとなく、開けてはいけない箪笥の引き出しの話を思い出しました
(春の里、夏の里、秋の里の光景が入っている)
箱庭っぽい

読んでいて神隠しってこういうのもありかな、と思ったり

159: 名無しさん 2006/05/15(月) 01:13:15 ID:2vTtIcn10
歌う橋

知り合いの話。

彼の実家の山村に、歌う橋があったのだという。
夜中にそこを通りがかると、橋の下から軽やかな歌声が聞こえてくるのだと。
彼自身はよくある怪談だと思っていて、まったく信じていなかった。

しかしある夜、彼も実際に歌声を聞いてしまった。
澄んだ女性の声が微かに聞こえてくる。
不思議なことに少しも怖くない。橋の下を覗いてみたが誰も居ない。

 坊やはどこかな? 坊やはどこ行った?

そういう呼び掛けを延々と、調子よく繰り返している。
変わった歌だなと思ったが別に害がある訳でもなく、橋を後にした。
その後も何度か、その歌を耳にしたという。

社会人になり村役場に就職した彼は、村の昔話を本にする仕事を手掛けた。
その時初めて、件の橋を造る際に人柱が使われたという話を知った。

人柱は女性だったらしいが、詳しい素性は伝わっていない。
・・・おそらく坊やが居たんだろうな。そう思った。

現在その付近には護岸工事が成されて、橋も新しく架け替えられた。
コンクリート製の新しい橋は、歌わなくなったと聞かされている。

160: 名無しさん 2006/05/15(月) 01:14:53 ID:2vTtIcn10
クビリの木

知り合いの話。

猟師をしていた祖父と、一緒に山に入っていた時に教えられたこと。

 どこにどんな木が生えているか、ざっとでいいから覚えておけ。
 見慣れない木がある時は近よるんじゃない。
 この山にはクビリの木というものがあって、これに捕まると首を括ってしまう。
 だから怪しい樹木、覚えのない樹木は、極力避けるようにな。

そう言われたのだという。

もっとも、木の区別がつく程の知識、俺には少しもないけどね。
頻繁に山に入ることはないけど、爺ちゃんにもっと話を聞いておけば良かったよ。
彼はどことなく寂しそうな顔をした。

161: 名無しさん 2006/05/15(月) 01:16:02 ID:2vTtIcn10
トッピッシャン

友人の話。

彼女の実家は山奥深い村だ。
今は廃村となってしまったが、そこで奇妙な物を幾度となく見たという。

大きな家や寺に出向いた時には、襖をちゃんと閉めるようにきつく言われていた。
襖や障子をうっかり開けたままにしておくと、何者かが閉めに来るから。

ピシャッ!、と背後で大きな音がして驚かされるのだそうだ。

戸をピシャリと閉めることからか、それはトッピッシャンと呼ばれていた。
これに出くわすと、風邪を引いたりして具合が悪くなるとも聞いた。

彼女も一度、トッピッシャンに遭遇したことがある。
音にも驚かされたが、同時に身震いするくらい体中が寒くなったらしい。

慌てて襖を引き開けてみると、廊下には誰も見えない。
ただ廊下の空気も、まるで真冬のように冷え切っていた。

ひどく気味が悪い思いをしたせいか、以後はきちんと戸を閉めるようになった
のだという。

山と村の怖い話

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山の中の誰も知らんような場所を見つけに行くのって楽しいよな

引用元:http://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1146525531/

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