666: 名無しさん 2005/11/22(火) 22:02:33 ID:FGM2kkvE0
おーいと呼ぶ声
知り合いの話。
山で木を切っているとどこからともなく、おーいと呼ぶ声がする。
誰だ?と呼び返してみると、よく聞き取れない返事があった。
くり返す潰れた声に耳を澄ますうち、ようやっと内容が聞き取れた。
右手がないんじゃぁ
何のことだろうと訝しく思っていると、不意に耳元で重い声が聞こえた。
そこか
驚き振り返るが誰も見えない。それきり呼ぶ声も絶えている。
気味が悪くなり、そこで撤収したのだという。
その次の入山日に大きな事故が発生し、彼は右の肘から先を失って
しまったそうだ。
知り合いの話。
山で木を切っているとどこからともなく、おーいと呼ぶ声がする。
誰だ?と呼び返してみると、よく聞き取れない返事があった。
くり返す潰れた声に耳を澄ますうち、ようやっと内容が聞き取れた。
右手がないんじゃぁ
何のことだろうと訝しく思っていると、不意に耳元で重い声が聞こえた。
そこか
驚き振り返るが誰も見えない。それきり呼ぶ声も絶えている。
気味が悪くなり、そこで撤収したのだという。
その次の入山日に大きな事故が発生し、彼は右の肘から先を失って
しまったそうだ。
668: 名無しさん 2005/11/22(火) 22:50:28 ID:P+5fgYQ1O
山で迂闊に返事をしては
いけないってやつですね。ガクブル
いけないってやつですね。ガクブル
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676: 名無しさん 2005/11/23(水) 21:32:53 ID:6HDfBrGD0
廃屋
友人の話。
仲間三人で夏山を縦走していた時のこと。
崩れかけた廃屋を見つけたので、休憩がてらに入ってみることにした。
柱も畳も酷く傷んでいたが、それなりに涼しく快適だったという。
一休みした彼らは、屋内をうろついてみることにした。
部屋はどこも黴臭かったが、穴でも開いているのか明かりに困ることはない。
ぶらぶらと奥へ進んでいた彼らは、ある部屋の前で足を止めた。
そこだけは襖が朽ちておらず、閉ざされたままだったのだ。
よく見ると襖はまだ新しい物のようで、廃屋の中でそこだけ浮いて見えた。
「何でここだけ新しいんだ?」
疑問に思って引き開けると、中はぼんやりとしたオレンジ色で満たされていた。
数え切れないほどの蝋燭に囲まれて、白い布で覆われた雛壇が作ってある。
檀上には位牌が並べてあり、線香の匂いが流れてきた。
畳も柱も天井も、作られたばかりのようにピカピカに見えた。
そして部屋の真ん中には、白い木造の棺桶が据えられていた。
「失礼しましたっ」上擦った声で詫び、襖をできるだけ静かに閉めた。
抜き足で入口まで戻ると、そこから全力で走って逃げたのだそうだ。
友人の話。
仲間三人で夏山を縦走していた時のこと。
崩れかけた廃屋を見つけたので、休憩がてらに入ってみることにした。
柱も畳も酷く傷んでいたが、それなりに涼しく快適だったという。
一休みした彼らは、屋内をうろついてみることにした。
部屋はどこも黴臭かったが、穴でも開いているのか明かりに困ることはない。
ぶらぶらと奥へ進んでいた彼らは、ある部屋の前で足を止めた。
そこだけは襖が朽ちておらず、閉ざされたままだったのだ。
よく見ると襖はまだ新しい物のようで、廃屋の中でそこだけ浮いて見えた。
「何でここだけ新しいんだ?」
疑問に思って引き開けると、中はぼんやりとしたオレンジ色で満たされていた。
数え切れないほどの蝋燭に囲まれて、白い布で覆われた雛壇が作ってある。
檀上には位牌が並べてあり、線香の匂いが流れてきた。
畳も柱も天井も、作られたばかりのようにピカピカに見えた。
そして部屋の真ん中には、白い木造の棺桶が据えられていた。
「失礼しましたっ」上擦った声で詫び、襖をできるだけ静かに閉めた。
抜き足で入口まで戻ると、そこから全力で走って逃げたのだそうだ。
678: 名無しさん 2005/11/23(水) 22:07:24 ID:aTKcxK1a0
むしろ場所をはっきり書いて欲しいw
679: 名無しさん 2005/11/23(水) 22:46:11 ID:MaV0L/b60
アンザイレン
強い風が吹き荒れ、二人をつないだザイルが大きく揺れた。
一瞬、風のせいで腰が浮き、バランスを崩しそうになった。
腰を落とし、前を行く友人の背中に目をやった。
振り向いた彼が、不意に傾いた。
切り立った稜線の、右側の谷に向かって姿勢を崩した。
身構えたが、実のところ、こうした状況でパートナーが
滑落した経験などなかった。
どうすべきかは本で読んだし、練習もした。
ザイルで自分と結ばれたパートナーが落ちたら、逆側の谷に飛び降りる。
稜線を挟んで、ザイルの両端に自分とパートナーがぶら下がるようにし、
二人が落ちるのを防ぐのだ。
ともかく、彼は落ちた。
意を決する間もなく、飛んだ。
岩が足元を飛び去り、ザックが斜面に当たり、弾み、身体ごと転がった。
衝撃に見舞われ、とんでもない力を感じた。
内臓が暴れ、身体を内側から激しく叩いた。
大変な苦痛だったが、ザイルが伸びきり、反対側に落ちた彼と俺を、
しっかり支えてくれた証拠でもある。
ザックからこぼれた何かが谷底へ消えた。
ピッケルをしっかり両手で握り、全体重をかけて斜面に打ち込んだが、
30キロの体重差を支えられるかどうか、自信はなかった。
強い風が吹き荒れ、二人をつないだザイルが大きく揺れた。
一瞬、風のせいで腰が浮き、バランスを崩しそうになった。
腰を落とし、前を行く友人の背中に目をやった。
振り向いた彼が、不意に傾いた。
切り立った稜線の、右側の谷に向かって姿勢を崩した。
身構えたが、実のところ、こうした状況でパートナーが
滑落した経験などなかった。
どうすべきかは本で読んだし、練習もした。
ザイルで自分と結ばれたパートナーが落ちたら、逆側の谷に飛び降りる。
稜線を挟んで、ザイルの両端に自分とパートナーがぶら下がるようにし、
二人が落ちるのを防ぐのだ。
ともかく、彼は落ちた。
意を決する間もなく、飛んだ。
岩が足元を飛び去り、ザックが斜面に当たり、弾み、身体ごと転がった。
衝撃に見舞われ、とんでもない力を感じた。
内臓が暴れ、身体を内側から激しく叩いた。
大変な苦痛だったが、ザイルが伸びきり、反対側に落ちた彼と俺を、
しっかり支えてくれた証拠でもある。
ザックからこぼれた何かが谷底へ消えた。
ピッケルをしっかり両手で握り、全体重をかけて斜面に打ち込んだが、
30キロの体重差を支えられるかどうか、自信はなかった。
680: 名無しさん 2005/11/23(水) 22:47:20 ID:MaV0L/b60
腹ばいのまま、あたりを見回し、ぎょっとした。
反対側に落ちたパートナーが、ほんの数メートル横にいる。
もがきながらザイルをつかみ、必死に引っ張っている。
同じ側の谷に飛び降りれば、普通は二人とも谷底まで落ちるはずだ。
なぜ止まったのだろう。
同じ側に飛び降りた二人は確実に死ぬはずだった。
稜線に登ってからザイルをたどると、小さな岩にザイルが食い込み、
引っかかっていた。
そのおかげで、俺たちは谷底まで落ちるのを免れたらしい。
彼によれば、先に落ちたのは俺だった。
彼は俺と逆側の谷に飛び、俺を支えようとしたのだという。
二人の話は、ことごとく食い違った。
落ち着けと彼が言い、お前こそ、と俺が返した。
ザイルが引っかかっていた岩に、非常用の洋酒をふりかけた。
風はやまず、まだ先は長かった。
反対側に落ちたパートナーが、ほんの数メートル横にいる。
もがきながらザイルをつかみ、必死に引っ張っている。
同じ側の谷に飛び降りれば、普通は二人とも谷底まで落ちるはずだ。
なぜ止まったのだろう。
同じ側に飛び降りた二人は確実に死ぬはずだった。
稜線に登ってからザイルをたどると、小さな岩にザイルが食い込み、
引っかかっていた。
そのおかげで、俺たちは谷底まで落ちるのを免れたらしい。
彼によれば、先に落ちたのは俺だった。
彼は俺と逆側の谷に飛び、俺を支えようとしたのだという。
二人の話は、ことごとく食い違った。
落ち着けと彼が言い、お前こそ、と俺が返した。
ザイルが引っかかっていた岩に、非常用の洋酒をふりかけた。
風はやまず、まだ先は長かった。
683: 名無しさん 2005/11/24(木) 03:05:50 ID:5yFwQccE0
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よくわからない誰か説明して