reegan-fraser-35CHYUWHhzI-unsplash (1)

80: 名無しさん 2009/06/13(土) 12:59:58 ID:9uNV/t+xO
違和感

去年の夏、大白川添いの細い道を車で登って、ダムに行った。
大学のサークルで行ったもんだから皆テンションが上がりっぱなしで、しまいには手近に落ちてる流木や大きな石を湖面に向かってやたらめったら投げたりしていた。
そんな中自分だけは、山深くて湖面が真っ青な湖という日本離れした風景に何だか違和感というか恐ろしさみたいなものを感じてじっと静かに座ったままでいた。

結局何も起こらず日も暮れてきたから帰途に着いたのだが、大白川添いの道から国道に出た途端に土砂降りにあい皆疲れたのか車内はシーンと静まり返った。

白川村の宿泊施設に戻り、皆で大浴場に行った。
その時も自分は何とも言い難い奇妙な違和感を覚えたままだった。浴槽に浸かりゆっくり今日のことを考えていたら…気付いてしまった。

違和感の正体に。

大白川に向かう時と帰る時、今のメンバーじゃなかった。誰か一人足りないのか、誰か一人多くなっていやしないか。

そして何の考えもなしについそれを口に出して言ってしまった。
すると一緒に風呂に入っていたサークルのメンバーも皆同じことを考えていたらしかった。

結局その違和感も一晩寝たら嘘のように消え去ってしまった。
一体あれは何だったのか、今でも不思議に思っている。

もしかしたら皆が節度なくはしゃいだから山の神様に怒られたのかもしれんね。
以上、自分が山で体験した不思議な出来事でした。

スポンサーリンク
81: 名無しさん 2009/06/13(土) 14:23:20 ID:RElwm+ZgO
>>80
ちょっとした警告だったのかな?
山の神様だとしたら、まだ優しい(?)やり方だね。
乙でした。


102: 名無しさん 2009/06/15(月) 20:57:48 ID:CtfapK6h0
十二様

知り合いの話。

彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

「山の奥でよ、でっかい屋敷に行き着いたって奴が居たんだと。
 そんな深い奥にそんな物がある訳は無いんだが、実際に見付けたんだから仕方ねえ。
 でも何故か悪い感じはしなかったらしくてよ。
 そいつは中にずんずんと進んで入ったって言うんだ」

「客間みたいな部屋に入り込むと、部屋の中央に小さな物が置いてあった。
 掌に隠れるほどの笛だったそうだよ。
 吹くと小鳥の声がして獲物を呼び寄せる、そんな代物だ。
 何故か理由はわからんが、自分への贈り物だと理解出来たんだと。
 喜んで持って帰ったらしい。
 十二様(山の神)の授かり物だってな」

「これを吹くと、必ず立派な獲物が取れたって話だ。
 雉は勿論のこと、鳥に限らずヨツ(獣)まで簡単に手に入ったんだと。
 話を聞いた連れが羨ましがってよ、貸してくれってねだったんだが、するとこいつが
 奇妙なことを話しやがった」

「こいつ曰く、
 『この笛は俺が十二様から頂いた物だ。
  ほいほいと他の人に貸しちまったら、俺に罰が当たるかもしれん。
  それに、これを使えるのは日に一度だけなんだ。
  理由はわからねえ。
  でも、それ以上使っちゃなんねえって、それだけはわかるんだ』
 だから貸したくねえって言うんだな」

103: 名無しさん 2009/06/15(月) 20:59:27 ID:CtfapK6h0
(続き)
「しかし、この連れは性質が悪い奴だったみたいでな。
 何だかんだ煽てて強請って、無理矢理取り上げるような形で持って行っちまった。
 その夕方に、山ほど獲物を持ち帰ってよ。
 『こりゃぁ具合がええ。しばらく借りとくわ』ってニヤニヤ笑ってた」

「貸した奴は青い顔してよ。
 『お前、絶対に罰当たるぞ。もう俺は関係ねえ。笛はお前が責任取って持ってろ』
 って泣きそうになりながら吐き捨てた。
 連れの奴は嫌な笑いを浮かべてよ。
 『おう、そんなら貰うわい』って嬉しそうに家に帰ったんだ」

「そうしたらよ、その日の夜、その連れの家で騒ぎがあったっていうんだ。
 皆が寝静まった夜中に、バタバタと大きな音がしてよ。
 人の叫び声も聞こえたって話だ。
 事情を知ってる村の連中は、誰も近よらなかったって。
 翌朝恐る恐る覗いてみると、そいつの姿はおろか、そいつのおっ母もいなくなって
 いたらしい。
 不思議なことに、昨夜あれだけ音がしたっていうのに、家の中は綺麗に片付いていた
 ってよ。まるで何もなかったかのように。
 あぁ、結局そのまんまで、二度と帰ってはこなんだとさ」

「笛を取られた方も恐れちまって、それ以降山に入ることはなかったって話だ。
 まぁ、分をわきまえない輩は、それなりの目に遭うってことだな。
 人ってやつは取って食らうだけじゃない。
 取って食われることもあるんだってことは、忘れちゃならねえよ」

祖父さんはしみじみとそう言った。

189: 名無しさん 2009/06/19(金) 20:14:33 ID:RPxTjxzl0
二度葬

知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。

「とある山邑でですね、『葬儀がおこなわれるからお前も来い』って誘われたんです。
 それもただの葬儀じゃないそうで。
 神様の葬儀なんだと言われまして。
 余所者の私が顔を出しても良いのかって聞くと、余所者だからこそ是非出てくれと。
 変わった所だなぁと思いましたよ。
 結構その辺りの山地民族って、排他的なところが多かったから」

折角だからと参加してみた。
導かれた先は、何か石碑のような物が立てられた、山奥の空き地だったという。
邑人たちが車座になって碑を囲んでいる。

程なくして儀式が始まった。
着飾って勿体つけた様子の男が、木鍬で碑の前を掘り起こし始める。
この男性が責任者だったのか、他の者らは手伝うことなどせずに、ただ低い読経の
ような声を上げて地に穴が穿たれるのを見つめていたという。

やがて、男は鍬を放り出して、穴底に身を屈めた。
何か目当ての物を掘り出したらしい。
うやうやしく手中に収めると、それを皆に見えるよう頭上に掲げた。

酷く汚れていたが、間違いなく人間の頭蓋骨だった。


190: 名無しさん 2009/06/19(金) 20:15:35 ID:RPxTjxzl0
(続き)
男性は穴から出ると骨を丁寧に拭い、用意していた水で洗い始めた。
綺麗になったところで、もう一度高く掲げ、頭を垂れる。
その場にいた皆が頭を下げたので、彼もそれに合わせて一礼した。

男は再び穴に戻り、頭蓋骨を底に収めた。
男が穴から出ると今度は皆が土を掛け始め、空き地は間もなく最初の状態に戻された
のだという。

葬儀はそこで終わったようで、その後は邑に戻り、宴会が始まったそうだ。

「後で詳しい人に聞いた話ですが、あれは二度葬っていう習慣なんだそうです。
 一度土葬してから数年時間をおいて、もう一度掘り起こして骨を綺麗にしてから
 埋葬し直す・・・そんな葬儀なのだとか。
 あの邑の一般人は普通の土葬でしたが、神様だけが二度葬にされているみたいで。
 恐らく、神とされた骸自体が御神体のような感じなのかもしれませんね。
 私が目にしたのは、神様の丁度二回目の埋葬だったのでしょう」

「ただ何と言いますか。
 ちょっと気になるのが、あの邑の神様についてなんですが。
 聞いたところ、あそこって客人神信仰があるみたいなんですよ。
 日本でいうエビス信仰みたいな、共同体の外から来た物を神様に据えるっていう
 ヤツですね。
 で、二度目の葬儀が終わるとしばらくして、新しい神様と入れ替わるんだとか。
 そうやって二度葬の周期で、神様がグルグルと代替わりしている訳です」


191: 名無しさん 2009/06/19(金) 20:16:33 ID:RPxTjxzl0
(続き)
「私、邑を発つ時に言われたんですよ。
 『今度来るなら○年後に来てくれ』って。
 『あんたなら良い神様になれそうだ』って。
 見送ってくれた邑の人達皆が、実に良い笑顔でそう言ってくれました」

行ったんですか? 私のその問いに答えて曰く、

「とんでもない、とても行ける筈ないじゃないですか。
 うっかり神様にされてしまったらとても困ります」

そりゃそうですよねぇと返した時、はたと気が付いた。続けてこう質問する。

そう都合良く、神様の入れ替え周期で客人が死ぬものでしょうか?

「追求しない方がいいですよ。
 聞いてる限り、あそこで神が途切れたことは無いそうですし。
 住人はそれが当然だと思っているし。
 信仰っていうのは本当に怖いですよ」

彼は首を振りながらそう言った。

195: 名無しさん 2009/06/19(金) 20:58:01 ID:MlYfaN8vO
マレビト信仰怖ぁ
客人に娘を差し出して子種を貰う、ってのも客人神信仰に入るのかな?

198: 名無しさん 2009/06/19(金) 21:20:30 ID:RPxTjxzl0
>>195
それもある意味、客人神信仰なんでしょうねぇ。
でもこの信仰って下手すると、今日カキコした話のように
六部殺しみたいな方向に結び付くんですよねぇ。

人の心の働きってのは本当に恐ろしいと思います、ハイ。

山の宗教 修験道案内

▽注目記事

出典:http://anchorage.5ch.net/test/read.cgi/occult/1244550475/

スポンサーリンク