yama

449: 名無しさん 2006/09/25(月) 06:28:21 ID:2IyDt2q60
滑落

その男とは短い言葉を交わし、
同じ山頂を目指していることを知った。

登りの最後は、ちょっとした岩場になる。
昔は、修験者だけが山頂に立てる山だった。

今ではルートに沿って鎖が張られ、誰でも
昔の修験者と同じ景観を見ることが出来る。

その男が鎖を掴みそこね、滑り落ちた。
笑いながら男が身を起こしたが、立てない。
どこかを骨折していそうだった。

岩稜地帯に、添え木にできるようなものなど、ない。
もっとも、添え木が見つかったところで、
彼が歩いて下山することは不可能だったろう。

他の登山者に彼を見てくれるよう頼み、
俺は、最寄りの小屋へ向かった。

最寄りといっても、片道1時間以上かかる。
小屋に着くと事故の発生を伝え、無線で警察へ
連絡してもらった。
幸い、現場近くに、山岳救助隊員がいるらしい。

現場に戻ろうと思っていたが、小屋で説明などを
していると、意外に疲れていることに気付いた。

やがて、救助隊員が現場に到着したことが分かった。
男を動かすのは無理らしい。

明日、ヘリコプターで救助すると聞かされ、その夜は
小屋に泊まることになった。
転落した男には、救助隊員が一晩付き添ってくれる。

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450: 名無しさん 2006/09/25(月) 06:29:01 ID:2IyDt2q60
翌朝、天気は晴れ。
年に何度もないほどの青空。

小屋では、救助隊が持ち込んだ警察無線を使い、
飛び立ったヘリコプターのために気象情報を流し始めた。
情報は、管制官を通じてヘリコプターに伝わるらしい。

やがて、ヘリコプターが救助に失敗し、
引き返したことを知らせてきた。

事故現場にだけ雲がかかり、地表の様子がまるで
見えないらしい。
転落した男は、元気とのことだが、嫌な予感がしてきた。

午後、男に付き添う救助隊員から、雲が薄れてきたという
知らせが入り、ヘリコプターが再び離陸した。
小屋では、再び気象情報を流し始めた。

あと数分で現場にヘリコプターが到着するという時、
現場周辺にだけ、濃い雲がかかり始めた。

現場からの情報では、雲が斜面伝いに湧いてくるという。
転落した男の意識は薄れ、言葉にも、肉体的刺激にも
ほとんど反応しなくなっているらしい。

この快晴、最悪のタイミングで現場にだけ雲が湧く。
無線を扱う小屋番と目が合った。

俺と同じことを思っているのだと、直感した。
生贄という言葉が、一番近いかもしれない。
どこかの誰かさんに、あの男を助ける気などない。

451: 名無しさん 2006/09/25(月) 06:29:48 ID:2IyDt2q60
ヘリコプターは、燃料の残量が許す限界まで
現場付近を飛び続け、雲が晴れるのを待った。

やがて、虚しく引き返し、遠ざかるエンジン音を
聞きながら、男は最後の溜息をついた。

ヘリコプターの音が消え、雲が消え、
青空が現場に戻ってきた。
もはや救助ではなく、遺体回収作業となった。

男は救助隊員の背に縛り付けられ、小屋の前を通過する。
救助隊員の列の最後に、俺が続いた。
充分に助かるはずの怪我だった。

涙が、溢れた。

663: 名無しさん 2006/09/27(水) 05:19:35 ID:g/rk7bw50
先客

高校の山岳部だったころの、夏合宿で聞いた先生の話。

むかし部員生徒連れて山登ってたんだと。んで山頂から降りるとき、日も暮れてきたから
途中の山小屋で一泊しようということになった。

山小屋に入ると、先客が。
「きょうはこちらで、ご一緒になります。宜しくお願いします。」と先生は挨拶した。
壁に寄りかかって座っている先客は、ぺこりとお辞儀した。

それから一夜を過ごし、朝になった。
ふと目覚めると、外が騒がしい。出てみると、ヘリやら記者やら、なにやら大勢が
山小屋の外にいる。何事かと聞くと
「ここで遭難した方の遺体を寝かしておいた。ふもとまで運べなかったから、途中の山小屋に置いて
人手を呼んで、また来たんだ。」と関係者が答えた。

小屋の中を見てみると、壁に寄りかかっていたはずの男が、きちんとシートを被されて寝かされている。
すでに亡くなっていたはずの先客は、確かに昨日お辞儀をした。

それを他の部員生徒も見ていたという。
新聞にも載ったらしい。
先生は、幽霊とかそういう類の話は信じないのだが、なぜかオカ体験が多い。

「骨くわえた狐が足元通って、リンが燃えて人魂に見えたことはあったけど、
あれはどうにも腑に落ちない。」って言ってた。

もうその先生も定年で辞めちゃったけどね。

666: 名無しさん 2006/09/27(水) 08:00:24 ID:b0ScjsEk0
>>663

怖いのあとに切なさが……

690: 名無しさん 2006/09/27(水) 13:54:48 ID:MUHPOizb0
>>663
いい話?だなあ。
登山には危険が伴う。死と背中合わせであることを承知だった人の
静けさみたいなのを感じた。
無念もやり残したこともあるだろうが、安らかにお眠り下さい。

689: 名無しさん 2006/09/27(水) 13:03:34 ID:6fdZeRdG0
ミヤマクワガタ

小学校高学年くらいまでは、毎年母親の実家に祖父母訪ねて遊びに行ってた
その時の話

小学生にとって田舎と言えば虫捕り、虫捕りと言えば田舎w
実際、苦労してテレビでよくやるように木々に樹液塗ったり、罠なんかを仕掛けたりしなくても、朝起きたら
夜の間に家の光に集まって来たカブトやクワガタが、そこらに落っこちてる程の田舎だったので

でも大抵捕れる種類は決まっていて、カブトやコクワガタなどメジャーどころ(笑)ばかりだった
図鑑に載ってる様なレアで猛々しいノコギリクワガタやミヤマクワガタが捕りたくて、シイタケ栽培してた祖父に頼んで
早朝山の入り込んだ所まで一緒に連れてってもらう事に

朝5時に起こされて連れて行かれた場所は、自分にとってはまさに秘境レベルだった
で、期待通り見た事も無いようなクワガタ達もたくさん取れた

でもなんか変なの、確かに図鑑に載ってるのは平均的なモデルで実際には個体差があるんだろうけど
そこで捕れたのは小学生の俺から見ても、やっぱりちょっと違ってた

中でも一番気色悪かったのが前述のミヤマクワガタ
産毛が生えてて金色っぽい体色が特徴なんだけど、そこで捕れたのは真っ黒か白っぽいやつがほとんど
そして足が欠損していたり、角が左右アンバランスだったり未発達なやつも多い

ここまで読んで予想付いた方もいるとは思うけど、ネタをばらすと近くの山に例の施設があったって話です
地名書くと場所が特定されそうなんだけど、人形峠でググレば何となくわかる
下流の市では、背骨のひん曲がった鮎なんかもよく釣れるらしいし・・・

693: 名無しさん 2006/09/27(水) 14:34:06 ID:zZLtFd5AO
>>689
例の施設?なにそれ?
と思いぐぐってきた。
なるほどね。

別の意味でコワーな話だよな。

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引用元:http://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1157438374/

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